型管理適正化推進事業キャンペーン(第1弾)

 ◆単独インタビュー

「型管理の適正化はサプライチェーン全体の問題である」

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  • ― 経済産業省製造産業局素形材産業室 谷 浩 室長に聞く

    2019年、経済産業省は発注側、受注側業界の双方が参加する「型取引の適正化推進協議会」を設置し、型の廃棄・返却や型の保管費用項目に関する目安をはじめ型取引の基本的考え方を取りまとめるなど、さらなるステップに踏み出した。本年8月に新たに経済産業省製造産業局素形材産業室長に就任した谷浩氏に型取引、とりわけ型管理適正化に向けた同省の考え方、今後の取り組みについて聞いた。

                         谷室長(右)と今福室長補佐 


  • ――下請取引の適正化を目指す政策パッケージ「未来志向型の取引慣行に向けて」(世耕プラン)が公表されてから4年経過しました。プランそのものをどのようにお考えでしょうか。

    谷 重点3課題(不合理な原価低減要請、支払代金の現金化、型管理の適正化)はどれも重要です。不合理な原価低減要請はさすがに論外であり、プラン発表後は減少しつつあるようです。ただしその先にある価格決定方式の適正化については多少、時間がかかると思います。私がすぐにでも改善が必要だと思うのは、代金の支払い形態と型管理の2つです。これらは、サプライチェーン全体の問題として考えれば、自ずと道は開けるものと思います。

    ――具体的にはどういうことでしょうか。

    谷 支払い形態から言いますと、例えば、機織りの人が反物を作ったとします。その人たちは作った時にお金をもらいたいのですが、卸業者や商社の人たちは着物が売れるまではお金が入らないから、機織りの人に支払うには手形が必要だ、というのは多少なりとも理解できます。このように、複数の下請事業者の間に卸業者などが入る場合は、これまで手形というものはある程度、機能していたと思います。しかし、毎日のように型や部品をやりとりしている企業間で、月末締めや検品から180日手形というのはどう考えても異常です。また、手形を安く買う人がいることが分かっているのに、このような取引慣行を続けているのはおかしなことです。下請事業者が疲弊して企業数が減ったら、自らのサプライチェーンを壊すことになりかねず、もう手形による支払いはやめたほうがよいと思います。

     同様に、型管理に関してもサプライチェーン全体で改善すべき課題です。親事業者の場合、自分の会社の中なら、型の在庫を何十年間も抱えていることなどあり得ないのに、なぜ下請け事業者には押し付けられるのか、全く理解できません。この業界の形ができてから50〜60年も経っているのに、なぜ、そこにメスが入らなかったのか分からないくらいです。押し付けられたほうの下請事業者も、従業員に給与を払わなくてはならないので、型代には管理費用が上乗せされてきたと考えるべきです。そうでないと下請業者は倒産しかねないからです。そしてこの費用は回り回って親事業者が負担していたことになります。また3社あった下請け事業者が1社だけになってしまったら、普通に考えても親事業者が支払う型代は上昇すると思います。

    ――型管理の適正化は、4年前と比較して前進していると思われますか。

    谷 私は着任したばかりなので4年前との比較を肌で感じることはできませんが、協議会(型取引の適正化推進協議会)で出席者の方が「型管理の適正化が進むとは、5年前には全く想像もできなかった」と語っていたのを見て、この間に相当進んだことを実感しました。

    ――2019年12月に型管理に関する新たなルール(目安)を発表されました。

    谷 廃棄・返却の具体的な時期の目安と保管費用については明細のようなものを示させていただきました。実は、こういう問題で国が目安を示すというのは、あまり例がないことです。私が言うのも変ですが、目安を作成した型取引の適正化推進協議会が相当踏み込んだ結果です。初めは「なぜ、こんなことが決められるのか」と思ったほどでしたが、自動車関連をはじめ産業機械関連、電機・電子・情報関連の代表者などもかなり踏み込んで目安を決めてくれたのだと思います。3年、10年、15年など保管期間の目安ができたことによって、親事業者と下請事業者の双方が交渉しやすくなったと思います。
     保管費用の方は土地代にしても材料費にしても、地域によって差があるので、項目だけを作り、あとからそれぞれのコストを入れられるようにしました。

    ――型取引の適正化推進協議会の近況について教えてください。

    谷 直近では中小企業庁が型管理の状況を把握するために、9月から11月にかけてフォローアップ調査を行い、12月に調査報告書をとりまとめることになっています。今後も、同協議会を運営して、産業界での型取引の適正化に向けた取組の実施・浸透状況を把握することとしており、ベストプラクティスの紹介、フォローアップ調査を実施するなど、産業界と連携して型取引の適正化が着実に実施されるよう取り組んでいきます。

    ――下請事業者に対して、「型を野さらしにするのではなく、もっときちんと管理すべきだ」という声も一部にはあるようですが。

    谷 それに関しては、今までその契約がどうだったかにもよると思います。未来永劫預かってくれという話だったのか、補修品が出てくるまでだったのか、そもそもそういう契約がなくて、業界慣習としてある程度保管しておこうということだったのか。それにより大分違ってくると思います。おそらく正解は業界慣習としてある程度までは保管しておくということだったと思います。しかし、これから先は、お金が支払われるので、期間を決めてきちんと管理すればよいだけのことだと思います。それにより、すごくクリアーに変わってくると思います。保管義務がないのなら捨てればよいわけです。管理契約さえきちんと交わすことができれば、きちんと管理されるようになると思います。

    ――本会の取り組みについてどのように評価されますか。

    谷 とてもよくやられており、有難いことだと思っています。我々がいくらプランを作っても、動いてくださる人がいないと前には進めません。それを、様々な形で分かりやすく実行していくことはとても大事なことですし、どんどん進めていただくことを期待しております。

    ――本年7月にパートナーシップ構築宣言を策定した目的を教えてください。

    谷 パートナーシップ構築宣言は省庁の横断的組織であるパートナーシップ構築推進会議が、大企業と中小企業が共に成長できる持続可能な関係を構築するために策定したものです。そこに登録した企業は「適正な取引をします」と宣言したわけですから、特に下請事業者は交渉がしやすくなります。登録企業が増えれば増えるほど、型管理の適正化に向けて力になると思います。

    ――ご自身はこれからどのような行動をとられるつもりですか。

    谷 まずはいろいろな方とお会いして、話を聞きたいです。私は型管理の適正化は、異論がないのではないかと思っています。しかし、私が気付かないところで「こういう障害がある」と教えてくださる方もいるかもしれません。特に反対意見を持たれている方のお話は是非とも聞きたいところです。そういう部分をつぶして問題解決に導くことが我々の仕事だと思っているからです。あとはできているところの横展開ですね。北海道モデルとか九州モデルとか、成果を上げている地域があると動きが加速するものです。
     私は過去に3年間、LPガスを担当していたことがありますが、そのときは47都道府県のうち、36都道府県を回りました。「LPガスを愛しているのか」とからかわれたこともありました。現在はコロナ禍にあるため、行けるところは限られてくると思いますが、可能な限り全国を回って普及活動に努めたいと思っています。そして「素形材産業を愛しているのですね」と言われるようになりたいです。

    ――型管理の適正化の波が素形材関連団体全体を巻き込んだ大きなうねりになるためには、どのようなことが必要だと思われますか。

    谷 型管理の適正化を親事業者と下請事業者間の問題という狭い捉え方をするのではなく、サプライチェーン全体の問題として捉えることです。親事業者と下請着業者がお互いにメリットを生むには、コストを顕在化することです。利益の最大化を狙うには固定費を極力、削ることが必要ですが、型管理費は、ともすると従来、型代の中に内包されていて表面には現れていませんでした。そのコストを顕在化させれば、本当の固定費がいくらで、それがどこまで削れるかということが分かるわけです。コストが見えるようになればマネジメントもしやすくなるし、そうすることでサプライチェーン全体のコスト削減ができるようになるのではないでしょうか。そのことを素形材産業の中の共通認識として持てるようにすることが重要だと思います。

    本会では新たなルール(目安)の公表を機に、「型管理適正化推進事業キャンペーン」を展開し、会員企業はもちろん、日本の製造業に向けて、型管理を含む下請取引環境の改善を目指して行きたいと思っています。ぜひ貴省の後押しをお願いします。

     


今後の予定

2020年11月
T1鼎談  潟Gイチワン/潟Wーテクト/椛搏c製作所
2020年12月
T2座談会
2020年12月
全国素形材企業WEB座談会
2021年1月
全国素形材企業シンポジウム
2021年1月
TMSA機関誌「Provide」 ”まるごと一冊型管理の適正化” 発行
 

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